自動車部品や家電製品などの金属製品を効率よく大量生産するうえで、ダイカストマシンは欠かせない産業機械です。
複雑な形状の金属パーツを数秒から数十秒という短時間で精度高く成形できるため、幅広い製造現場で導入されています。
この記事では、ダイカストマシンの基本構造から成形サイクルまで、成形工程を理解するために必要な仕組みを解説します。

ダイカストマシンは、型締め装置と射出装置という2つの主要ユニットで構成されています。
型締め装置で金型を固定し、射出装置で溶湯を金型へ送り込むことで製品を成形する仕組みです。
ここでは、ダイカストマシンを構成する主要な装置の役割と、マシンの主な種類について説明します。
型締め装置の役割は、溶けた金属を注入する際に金型が開かないよう強力に固定することです。
金属を流し込む際は非常に高い圧力がかかるため、型締め力が不足すると金型の隙間から金属が漏れ出し、成形不良や事故の原因になります。
型締め装置には、主流のトグル式や油圧シリンダで直接締め付ける直圧式などの方式があり、トン(t)やキロニュートン(kN)で表される型締め力で金型を保持します。
一方、射出装置の役割は、溶けた金属を金型の内部へ高速かつ高圧で送り込むことです。
金属は冷えるとすぐに固まる性質を持つため、プランジャーと呼ばれるピストンを用いて一気に金型内へ押し込みます。
注入のスピードと圧力の制御が、製品の強度や表面の仕上がりを左右します。
ダイカストマシンは、溶けた金属を供給する仕組みの違いによって「コールドチャンバー」と「ホットチャンバー」の2種類に分かれ、扱う金属材料の融点(溶ける温度)に応じて使い分けられます。
| 方式 | 特徴 | 主な対応金属 |
|---|---|---|
| コールドチャンバーマシン | 射出部が溶解炉の外にあり、手動またはロボットで金属を都度給湯する | アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金 |
| ホットチャンバーマシン | 射出部が常に溶けた金属の中に浸かっており、連続して素早く射出できる | 亜鉛合金、鉛合金(低融点金属) |
アルミニウムのように融点が高い金属は、射出機構を傷めないようコールドチャンバーマシンを使用します。
反対に、亜鉛のように融点が低い金属は、作業効率が高いホットチャンバーマシンを使用するのが一般的です。

ダイカストの成形は、型締め→射出→凝固→型開きという流れで進みます。
各工程を繰り返して製品を成形するため、1回の成形にかかる時間であるサイクルタイムは、生産性にも関わる指標です。
では、各工程の役割とサイクルタイムの内訳を確認しましょう。
まず、可動側の金型を移動させて固定側の金型と密着させ、型締め装置で金型を保持します。
金型が適切に閉じた状態になったら、次は射出装置による射出です。
射出では、射出スリーブに供給された溶湯をプランジャーで押し出し、金型のキャビティへ充填します。
充填の進み具合に応じて制御されるため、射出速度は一定ではありません。
金型内への充填が完了すると、次の凝固工程へ移ります。
注入した金属を冷却して固め、完成した製品を金型から取り出す工程です。
金型内に満たされた金属は、金型内部を通る水や油の冷却配管によって急速に熱を奪われ、数秒から数十秒で凝固します。
金属が完全に固まった後、型締め装置が可動金型を後退させ、型開きを行います。
型が開くと、押出ピン(エジェクタピン)が作動して製品を金型から押し出し、押し出された製品は取り出しロボットが受け取り、次工程へ搬送されるのです。
最後に金型の表面へスプレー装置で離型剤を塗布し、次の成形に備えます。
ダイカストのサイクルタイムは、射出時間・冷却時間・可動時間の3つに分けられます。
射出時間には溶湯を金型へ充填する時間、冷却時間には金型内で製品を凝固・冷却する時間、可動時間には型開閉や製品の取り出し、離型剤の塗布などにかかる時間が含まれます。
ダイカストのサイクルタイムは、製品や成形条件などによって異なるため、一概には言えません。
しかし、目安の一例として、YONGLIHAO MACHINERYでは、アルミニウムダイカストのサイクルタイムを約30〜60秒とし、その内訳を射出時間5〜10%、冷却時間50〜70%、可動時間20〜40%としています。
| 工程区分 | 主な作業内容 | 時間の目安・割合 |
|---|---|---|
| 射出時間 | 溶湯の射出・充填 | 全体の約5〜10% |
| 冷却時間 | 金型内での凝固・冷却 | 全体の約50〜70% |
| 可動・準備時間 | 型開閉、製品取り出し、離型剤の塗布など | 全体の約20〜40% |
この例では冷却時間がサイクルタイムの大きな割合を占めています。
そのため、生産性を高めるには、品質を維持できる範囲で冷却時間を適切に設定し、型開閉や取り出しなどの可動時間も含めて各工程の時間を見直すことがポイントになります。
参考:YONGLIHAO MACHINERY「金属ダイカストの時間:サイクルタイムと最適化ガイド」

ダイカストの成形工程では、作業条件のわずかな変化や設定のズレによってさまざまな課題が発生します。
高品質な製品を効率よく生産するために、成形時に生じやすい不良やロスの原因を正しく把握しておきましょう。
圧力や射出速度の設定が適切でない場合、充填状態が安定せず、ダイカスト製品の不良につながります。
ダイカストでは、射出の初期段階ではプランジャーを低速で進め、その後、高速で溶湯を金型へ充填する多段階の射出が行われます。
射出速度が速すぎると溶湯が金型内で乱れやすくなり、空気やガスを巻き込む原因になりますが、速度が遅すぎる場合は金型内で溶湯が固まり始め、充填不足などの不良につながるのです。
また射出圧力も、製品を適切に成形するための重要な条件です。
圧力が不足すると、金型の隅々まで溶湯が行き渡らず、鋳巣や充填不足などが発生しやすくなります。
反対に、必要以上に高い圧力をかけると、金型への負荷が大きくなるほか、バリが発生する原因にもなります。
サイクルタイムのロスは、主に設備の調整不良や工程間の連携不足によって生じます。
以下は、その主な要因です。
一つひとつのロスが数秒程度でも、連続して生産する場合には、1日の生産数や稼働時間に影響します。
ダイカスト製品の代表的な品質課題として、内部に空洞ができる「鋳巣(ボイド)」や「ガス巻き込み」が挙げられます。
金属を高速で金型内へ注入する際、キャビティ内部に残った空気や、離型剤が気化したガスを金属内部に巻き込んでしまう現象が原因です。
製品内部にガスや空洞が残ると、強度が低下するほか、熱処理や塗装の工程で表面が膨れ、不良品になる場合があります。

ダイカスト成形において、溶けた金属(溶湯)や金型の温度管理は製品の品質と生産性に直結する重要な要素です。
ここでは、溶湯温度がサイクルと品質に与える影響や、安定した温度管理を実現する設備について解説します。
溶湯温度が低すぎると、金型へ充填する途中で凝固が始まりやすくなります。
その結果、金型の隅まで溶湯が行き渡らない未充填や、溶湯同士が十分に融合しない湯境などが発生するのです。
反対に、必要以上に高い温度で溶湯を保持すると、今度は冷却・凝固に必要な時間が長くなります。
つまり、溶湯温度は高ければよいわけではなく、使用する合金や製品、成形条件に応じた温度管理が必要です。
なお、ダイカストでは溶湯温度だけでなく、金型温度やホットチャンバーマシンの場合、ノズルの温度なども含めて管理することが求められています。
成形品質を安定させるためには、溶解炉や金型温調機を活用した正確な温度制御が不可欠です。
溶解炉で溶湯温度を適正値に保つことで、射出時の流動性と凝固速度のばらつきを抑えられます。防げます。
また、金型内部に熱媒体を通す金型温調機を併用し、金型自体の温度を一定に維持する運用も効果的です。
溶解炉の温度制御については「溶解炉の温度制御を安定させる仕組みと装置選定のポイント」で解説しています。
ダイカストマシンの成形工程では、型締めや射出、冷却、型開きなどの各工程が連動しており、圧力や速度、温度、サイクルタイムの管理が成形品の品質や生産性に影響します。
成形条件を見直しても品質が安定しない、サイクルタイムを短縮したい、設備の改善方法が分からないといった場合は、現場の状況に合わせた対策が必要です。
真岐興業株式会社では、ダイカストマシンや成形工程に関する課題についてご相談を承っています。
また、金型温調機や溶解炉、真空装置、離型剤自動希釈圧送装置など、ダイカスト鋳造の周辺設備を通じて成形工程の課題解決もお手伝いしています。
鋳巣の低減や温度管理の安定化など、現在の設備や成形条件を踏まえて改善方法を検討したい場合は、ぜひお問い合わせください。
