個別式離型剤自動希釈圧送装置、真空装置、ダイカスト用周辺設備の設計・製作から販売・施工、ダイカスト鋳造用消耗品・副資材各種販売など、ダイカスト製造業の便利屋的存在として事業を展開しております。

BLOG 技術ブログ

2026.09.30

真空装置の原理と構造の基礎知識


真空装置は、装置内部の空気などの気体を減らし、通常の大気圧よりも低い圧力の状態を作り出す装置です。

真空ダイカストの導入や見直しを行う際には、真空装置が動く根本的な仕組みや構造を把握しておく必要があります。

仕組みを理解しないまま運用を検討すると、自社の現場に適した設備選定が難しくなるためです。

そこで本記事では、真空状態が生じる物理的な原理や、装置を構成する基本的な要素を解説します。

さらに、真空度の理解不足が引き起こす選定ミスや、ミスマッチを防ぐための考え方についてもまとめました。

真空状態とはどのような物理現象か

真空とは、空間内に存在する気体の量が少なくなり、大気圧よりも圧力が低くなった状態を指します。

完全に気体が存在しない状態だけを真空と呼ぶわけではありません。

ここでは、なぜ密閉空間の圧力が下がるのかという物理的な仕組みと、圧力の低さに応じた真空度の分類について解説します。

気体分子が減少して圧力が下がっていく仕組み

真空状態は、一定の空間に存在する気体分子の数が減少することで、気体が容器の壁などに衝突する回数が少なくなり、圧力が低下することで生じます。

普段の空気には窒素や酸素などの気体分子が多数存在していますが、これらの分子は自由に動き回り、容器の壁や周囲の物体に衝突しています。

この衝突によって生じる力を、単位面積あたりで表したものが圧力です。

たとえば、密閉された容器の中に大量の気体分子がある場合、分子が壁に衝突する回数も多くなります。

一方、容器内の気体分子を減らしていくと、壁に衝突する分子の数が少なくなるため、圧力も低下します。

このように、真空は「何もない空間」ではなく、空間内の気体が少なくなって圧力が低下した状態と考えると理解しやすいでしょう。

また、真空中でも気体分子が完全に消滅するとは限りません。

どの程度まで圧力を低下させた状態かによって、真空の状態は区分されます。

真空度によって分けられる状態の違い

真空状態は、空間の中にどれだけの気体分子が残っているか(つまり圧力がどれだけ低いか)によってレベルが分かれます。

このレベルを示す尺度が「真空度」です。

日本産業規格(JIS Z 8126-1)の定義に基づくと、真空度は圧力の範囲によって主に以下のように分類されます。

真空度の分類 圧力範囲 空間内の状態
低真空 100kPa〜100Pa

大気圧よりわずかに圧力が低い状態。気体分子の密度は依然として高いレベル。

中真空 100Pa〜0.1Pa

低真空よりもさらに気体分子が少ない状態。工業的な加熱や一般的な減圧処理で用いられる。

高真空

0.1Pa〜10-5Pa

(または 0.00001Pa)

空間内の気体分子が激減した状態。分子同士が衝突するよりも、容器の壁に当たる頻度が高くなる。

 

このように、対象の空間から気体分子をどの程度まで減らすかによって真空度の区分が決まり、空間内の物理的な性質も変化します。

参考:日本真空工業会「真空技術用語(JIS Z 8126-1)」

真空を作り出す装置の構成

真空装置は、真空ポンプだけで構成されているわけではありません。

真空ポンプを中心に、バルブや配管などの複数の要素を組み合わせて構成されています。

では、それぞれの構成要素がどのような役割を持つのかを確認しましょう。

真空ポンプの種類と特徴

真空ポンプは、真空装置内の気体を排出して真空状態を作るための主要な構成要素です。

真空ポンプには複数の種類があり、それぞれ構造や適した用途が異なります。

以下は、代表的な真空ポンプの種類です。

  • 油回転式ポンプ:油を使用して気体を排出する方式で、比較的幅広い用途に使われます。
  • ドライポンプ:油を使用せずに排気する方式で、油による汚染を避けたい用途などに適しています。
  • 水封式ポンプ:水を利用して気体を排出する方式です。
  • ルーツポンプ:回転するローターによって気体を移送する方式で、大きな排気量が必要な場合に用いられます。

このほかにも、用途や必要な真空度に応じてさまざまな種類があります。

真空ポンプを選ぶ際には、ポンプの種類だけでなく、必要な真空度や排気能力、使用する気体などの条件も確認するようにしましょう。

ただし、実際の仕様選定では装置全体の構成を踏まえて判断する必要があるため、ポンプ単体の特徴だけでは決められません。

バルブと配管系統が果たす役割

バルブと配管系統は、真空ポンプと真空を利用する設備の間で、気体の流れを管理するための構成要素です。

ポンプだけでは、装置内の状態を適切に切り替えたり、必要な部分だけを真空にしたりすることはできません。

バルブには配管を開閉したり、気体の流れを切り替えたりする役割があり、たとえば装置の一部を真空系統から切り離す場合や、真空状態を保持する場合などに使用します。

一方、配管系統は真空ポンプと対象となる設備をつなぎ、気体が移動する経路を形成する部分です。

配管の構成によって、ポンプと真空を利用する設備との接続関係が決まります。

このように、真空装置は「真空ポンプで排気する」という単純な構成ではなく、ポンプ・バルブ・配管などを組み合わせて一つの系統を構成しています。

どのような構成要素を組み合わせるかは、必要な真空度や設備の仕様、使用環境などによって異なります。

真空度の理解不足が招く導入判断のミス

真空装置は、必要な真空度や排気能力を正しく把握したうえで選定する必要があります。

必要以上の性能を持つ装置を選ぶとコストが増えますが、反対に、性能が不足すると期待した効果を得られない可能性があるためです。

では、導入前の仕様判断で起こりやすい2つのミスをみていきましょう。

必要な真空度を見誤ることで生じるコスト過多

製品や工程に必要な真空度を過大に見積もってしまうと、不要な設備投資が発生してコスト過多に陥ります。

「真空度が高ければ高いほど品質も上がるはずだ」と考えてしまい、自社のワークに対して過剰なスペックの装置を選んでしまうケースは珍しくありません。

しかし、必要以上に高い真空度を求めると、次のようなコスト負担が生じます。

  1. 高真空に対応する特殊なポンプや精密バルブが必要になり、初期導入費用(イニシャルコスト)が高騰する
  2. 高い気密性を保つための特殊なシール構造や太い配管が求められ、設計・施工の費用が増大する
  3. スペックに見合った電力を常時消費するため、維持費(ランニングコスト)がかさむ

自社の目的に合った適正な真空度を見極めることが、無駄な費用の発生を防ぐポイントです。

排気能力を見誤ることによる効果の低下

コストを抑えたい一心で排気能力を低く設定しすぎると、期待していた品質改善の効果が得られなくなります。

ダイカストのように短時間で排気を完了させなければならない現場では、到達する「真空度(圧力の低さ)」だけでなく、「排気能力(一定時間内に吸い出せる気体の量)」も欠かせない評価軸です。

排気能力が不足している場合に生じる主な影響には、以下のようなものがあります。

  • タクトタイム(1台あたりの製造にかかる標準時間) 内に目標の圧力まで下げきれず作業工程が遅延する
  • 金型や容器内の気体を素早く引き抜けず、製品にガス巻き込みなどの不具合が残る
  • 装置を導入したにもかかわらず望んでいた成果に結びつかない

性能の過不足による失敗を防ぐには、求める真空度と排気能力のバランスを事前に正しく理解しておく必要があるのです。

原理と構造の理解に基づく仕様選定

真空装置で狙い通りの効果を得るためには、基礎的な原理や装置構造の知識を踏まえたうえで、自社の現場に合致する仕様を見極めなければなりません。

必要な真空度や排気能力を整理するポイントと、ミスマッチのない仕様決定に向けた考え方について解説します。

必要な真空度・排気能力の見極め方

必要な真空度や排気能力を判断するには、真空装置を使用する工程の条件を具体的に整理することが大切です。

たとえば、次のような条件によって必要な仕様は変わります。

  • 工程で必要となる真空度
  • 目標とする真空状態に到達するまでの時間
  • 対象となる製品の形状や大きさ
  • 真空を利用する設備やラインの構成
  • 使用する環境や工程の条件

同じように真空を利用する設備でも、製品の形状や設備構成が異なれば、必要な真空度や排気能力も同じになるとは限りません。

また、前述したように「できるだけ高い真空度」「できるだけ大きな排気能力」という基準だけで仕様を決めると、必要以上の性能を持つ設備を選んでしまう可能性があります。

反対に、必要な条件を十分に確認しなければ、排気能力などが不足して目的の工程に適さない場合もあります。

そのため、仕様選定では自社の工程で何を実現したいのかを整理し、その条件を満たすために必要な真空度や排気能力を検討することが基本です。

なお、真空装置の基本や具体的な選定ポイントなどについては「ダイカスト向け真空装置の基本と役割および導入時の選定ポイント」で解説しています。

自社条件に合った仕様は相談で解消する

真空装置には、すべての現場に共通する「この仕様なら適している」という答えはありません。

必要な真空度や到達時間、製品形状、ライン構成などが現場ごとに異なるためです。

特に既存設備に真空装置を組み込む場合は、装置単体の性能だけでなく、現在の設備との接続や工程全体との関係も考慮する必要があります。

仕様を数字だけで比較して決めると、自社の設備条件に合わない可能性もあるため、導入前に現場の状況や使用条件を共有し、それらを踏まえて仕様を検討するようにしましょう。

それが真空装置と現場のミスマッチを避ける方法の一つです。

真空装置の仕様は、「どの程度の真空度が必要か」だけでなく、「どのような設備で、何のために使用するのか」まで含めて考えることをおすすめします。

この点を踏まえて検討・相談することで、自社の工程に適した仕様を判断しやすくなり、満足のいく導入が可能になるでしょう。

真空装置の選定は真岐興業にご相談ください

真空装置の仕様は、必要な真空度や排気能力だけでなく、製品形状や既存ラインの構成など、現場ごとの条件を踏まえて検討する必要があります。

真岐興業では、用途や設備条件に合わせた柔軟な組み合わせが可能です。

既製品では対応が難しいケースには、ワンオフでの製作にも対応しています。

真空装置選びに迷ったら、弊社までお気軽にご相談ください。

詳しい製品情報は、真岐興業の商品情報ページでご確認いただけます。

自動希釈装置お問い合わせバナー

一覧へ戻る