
切削油を安全に使用するためには、性能だけでなく法規制や成分に関する情報の正しい理解が欠かせません。
特に、労働安全衛生法に基づくSDS(安全データシート)は、製品の危険有害性や適切な取扱方法を確認するための重要な資料です。
しかし、SDSの内容を十分に確認しないまま使用すると、作業者の安全や法令への対応に影響するおそれがあります。
この記事では、切削油に関わる主な法規制やSDSの基本的な見方、安全性を確認する際のポイントについて解説します。
なお、切削油の基本的な役割や種類については「切削油の基礎知識と加工品質を安定させる選び方」で詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。

SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)は、化学物質を安全に取り扱うための情報をまとめた文書です。
切削油を取り扱う企業は、労働安全衛生法をはじめとする各種法規制に基づいた管理体制の構築が義務付けられています。
ここでは、労働安全衛生法とSDSの関係、SDSで確認すべき主な項目について紹介します。
化学物質による健康被害を防ぐため、労働安全衛生法では特定の化学物質を含有する切削油について、SDSの交付およびラベル表示を義務付けています。
作業者が油剤に触れることで起きる皮膚炎や油煙(オイルミスト)の吸引による呼吸器障害などを防止することが主な目的です。
厚生労働省の規定により、危険有害性のある化学物質を含有する製品を他事業者に譲渡または提供する際は、原則として事前に情報を提供しなければなりません。
事業者はSDSを入手してリスクアセスメントを実施し、現場のばく露防止策に反映させる役割を担っています。
なお、法規制の内容や基準値は改正される場合があるため、最新の情報は厚生労働省の公式サイトや、購入先から提供される最新のSDSで必ず確認してください。
参考:厚生労働省「化学物質管理に関する相談窓口(ラベル・SDS・リスクアセスメント)」
SDSには、製品を安全に使用するために必要な情報が体系的にまとめられています。
記載内容はJIS Z 7253に基づく16項目で構成されており、代表的な内容は次のとおりです。
切削油を使用する際は危険有害性だけでなく、保護具の種類や保管方法、漏えい時の対応なども確認しておくと、安全管理につながります。
また、SDSは法令改正や製品仕様の変更に合わせて更新される場合があります。
使用前には最新版を入手し、内容を確認するようにしましょう。

切削油の安全性を客観的に判断する際には、JIS規格(日本産業規格)への適合状況や製品ラベルの成分表示が重要な指標です。
製品ごとの特性を正しく把握し、現場の使用環境に適した油剤を選択しましょう。
JIS規格は、製品の品質や試験方法などについて一定の基準を定めた日本産業規格です。
切削油に関するJIS規格では、製品の性能や品質を評価するための考え方や試験方法が示されています。
そのため、JIS規格への適合状況は、製品を選定する際の一つの目安になります。
ただし、JIS規格への適合だけで、すべての使用環境における安全性が保証されるわけではありません。
実際の使用にあたって大切なのは、SDSに記載された危険有害性や取扱方法、保護具に関する情報も必ず確認することです。
切削油に含まれる添加剤の成分表示を事前に確認し、潜在的なリスクを把握しておきましょう。
加工性能を高める目的で配合される化学物質の中には、取り扱いに注意が必要なものが含まれます。
【塩素系添加剤】
極圧潤滑性に優れる反面、焼却廃棄時の条件によっては有害物質の発生リスクや、金属に対する腐食性の問題が指摘されています。現在は環境負荷低減の観点から、非塩素系への切り替えを検討するケースが増加しています。
【硫黄系添加剤】
高温下の加工で効果を発揮しますが、活性型の硫黄化合物は銅合金を腐食させる性質を持ちます。また、特有の臭気による作業環境への影響も考慮が必要です。
成分そのものを一概に、危険または安全と断定することはできません。
供給元から開示される成分情報をもとに、必ず自社の設備や排気装置で安全に扱えるかを個別に確認するようにしましょう。

切削油の安全管理では、SDSや法規制に関する情報が十分に活用されていないケースもあります。
ここでは、現場で起こりやすい課題と、その背景について紹介します。
SDSを入手していても、現場の作業者まで内容が十分に共有されていないことがあります。
たとえば、管理担当者だけがSDSを保管し、実際に切削油を扱う作業者が内容を確認していないケースです。
このような状況では、適切な保護具の使用方法や保管方法、緊急時の対応が十分に周知されない可能性があります。
また、製品を切り替えた際に新しいSDSに更新されていなかったり、古い情報のまま運用されたりすることもあるでしょう。
SDSは保管するだけでなく、必要な情報を現場で共有し、定期的に内容確認をしなければなりません。
成分や法規制の確認が十分でないまま製品を使用すると、管理上の問題につながる恐れがあります。
たとえば、新しい切削油に変更したものの、成分の違いやSDSの内容を確認せず従来と同じ管理方法を続けてしまうケースです。
保護具や保管方法、廃棄方法などが製品によって異なる場合もあるため、切り替え時には改めて確認しなくてはなりません。
また、法令の改正やSDSの更新に気付かず、古い情報のまま運用していることもあるようです。
労働災害や環境トラブルを防ぐためにも、供給元から提供される最新のSDSや公的機関の情報を定期的に確認し、自社の管理体制に反映させていきましょう。

切削油の安全管理では、法令への対応だけでなく、環境負荷や日々の管理のしやすさにも配慮することが大切です。
製品選定や供給方法を見直すことで、安全管理の負担軽減にもつながります。
近年は、環境負荷の低減を考慮した切削油への関心が高まっています。
たとえば、塩素系添加剤を使用しない非塩素系の切削油を採用する製品も増えています。
ただし、非塩素系だから安全性が高い、あるいは環境負荷が低いと一概にはいえません。
製品ごとに配合成分や用途が異なるため、SDSや成分表示を確認したうえで選定するようにしてください。
また、製品の選定時には加工対象や加工条件だけでなく、廃棄方法や管理体制も含めて検討すると、より適切な運用につながります。
水溶性切削油の希釈作業や補充を手動で行う場合、作業者が原液に直接触れる機会が増え、皮膚トラブルや液漏れ事故の原因となります。
濃度のばらつきも発生しやすく、現場の安全管理における負担は無視できません。
こうした課題に対して、希釈や補充を自動化する装置「自動希釈装置」の導入は現場の安全性を高める有効な手段です。
原液への直接接触を回避できるほか、適切な濃度を維持することで油剤の腐敗や悪臭を防止し、衛生的な作業環境を維持しやすくなります。
真岐興業株式会社でも、こうした安全管理の負担軽減をサポートする自動希釈装置を提供しています。
機器を活用して供給作業を安定させる取り組みは、現場の安全対策と作業効率化を両立させる一助となります。
自動希釈装置の具体的な選び方や特徴については、「自動希釈装置の失敗しない選び方〜3つのポイントでコストを削減」で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
切削油を安全に運用するためには、労働安全衛生法などの法規制を遵守し、SDSに記載された危険有害性や取扱上の注意を現場全体で共有することが不可欠です。
また、塩素系から非塩素系への切り替えといった環境負荷の低減や、希釈作業の自動化によるリスク軽減も有効な対策となります。
制度の把握から現場での運用、設備の改善までを自社だけで完璧にこなすのは、決して簡単ではありません。
「現場の安全対策をどこから見直すべきか分からない」「自社のラインに合う供給体制を整えたい」とお悩みの際はぜひ一度、真岐興業株式会社へご相談ください。
真岐興業株式会社では、工場ごとの設備環境や課題に合わせて、柔軟な組み合わせができる最適なシステムや製品をご提案しています。
標準的な設備では対応が難しい場合でも、現場のニーズに応じたワンオフでの設計・対応が可能です。
切削油の安全管理や供給体制の見直しをご検討の際は、まずはどのようなことでお困りか、現場のお悩みをお聞かせください。