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2026.08.05

切削油の希釈と濃度管理を安定させるpH確認を解説


金属を削る加工現場において、切削油を正しい比率で薄めて使うことは、製品の仕上がりを一定に保つために欠かせない作業です。

しかし「ただ水で薄めればいい」というわけではありません。

原液をどのくらいの割合で薄めるかという「希釈濃度」と、液体の性質を示す「pH」の2つを正しく管理することが、加工の成否を分けます。

本記事では、切削油の管理指標である「希釈濃度」と「pH」に着目し、それぞれを確認する理由や管理の考え方について解説します。

なお、切削油の基本的な役割や種類については「切削油の基礎知識と加工品質を安定させる選び方」で詳しく説明していますので、あわせてご覧ください。

切削油の希釈とpH管理の考え方

切削油の管理では、希釈濃度とpHが代表的な確認項目です。

どちらも現在の使用状態を把握するための管理指標として利用されており、安定した運用のためには継続的な確認が求められます。

ここでは、それぞれが品質管理で重視される理由について解説します。

希釈濃度が加工品質を左右する理由

希釈濃度が適切でなければならない理由は、濃度が高すぎても低すぎても、加工精度や現場の作業環境に悪影響を及ぼすためです。

原液の割合が多すぎて濃度が高くなりすぎた場合、冷却性能が落ちて加工部に熱がこもりやすくなり、製品の寸法に狂いが生じる原因になります。

さらに、加工中に出る油煙(オイルミスト)が増えるため、作業者の健康を害するリスクやコストの無駄遣いにもつながるでしょう。

反対に、水の割合が多くて濃度が低すぎると、金属を滑らかに削るための潤滑性が不足します。

その結果、工具が刃こぼれを起こしやすくなったり、加工した金属の表面にザラつきが残ったりします。

防錆(ぼうせい)性能も落ちるため、加工後の製品が短時間でサビてしまう事態も珍しくありません。

つまり、濃度を適正値に保つことは、工具と製品の双方を守る土台なのです。

pHが品質指標として重視される理由

pHは、切削油の状態変化を把握するための管理指標として利用されています。

水溶性切削油の多くは、サビを防ぐために弱アルカリ性に調整されていますが、使用を続けると微生物の繁殖などによって数値が低下していきます。

pHが管理基準より低くなると、加工機や製品がサビやすくなるだけでなく、液が腐敗して悪臭の原因にもなります。

現場では、こうした製品への実害や作業環境の悪化を未然に防ぐため、濃度測定とあわせて定期的なpH確認を実施するケースが少なくありません。変化の傾向を継続的に確認することで、切削油の寿命を延ばすことにもつながります。

現場で行う希釈作業とpH確認

希釈濃度とpHを適正な範囲で維持するためには、定期的な測定と記録が必須です。

現場では、希釈倍率の計算から濃度やpHの測定、記録の管理までを日常業務の一部として行っています。

ここでは、実際の管理作業の流れについてみていきましょう。

原液と水の比率を決める希釈倍率の計算方法

希釈倍率を正しく計算することは、狙った通りの濃度で切削油を作るために不可欠な工程です。

一般的に、水溶性切削油は「10倍」や「20倍」といった倍率、あるいは「10%」「5%」という濃度で指定されます。

これらは「作ろうとしている全体の液量(タンクの容量)」を基準に計算することで、必要な原液と水の量を迷わずに導き出せます。

たとえば、20倍希釈(濃度5%)の切削油を全体で100リットル作りたい場合、計算式は以下の通りです。

  • 必要な原液の量:全体の量 ÷ 希釈倍率 = 100リットル ÷ 20 = 5リットル
  • 必要な水の量:全体の量 - 原液の量 = 100リットル - 5リットル = 95リットル

調合する際は、必ず「水の中に原液を少しずつ注ぎながら混ぜる」という順番を守ってください。

原液に水を注ぐと、成分がうまく水に分散せず、不均一な分離状態になってしまうため注意が必要です。

また、実際の推奨濃度は切削油の種類や加工条件によって異なるため、使用する製品の仕様書メーカー推奨値を確認する必要があります。

濃度計やpH試験紙による測定方法

希釈した液の状態を正しく把握するには、専用の器具を用いた正確な測定が求められます。

濃度の測定には「屈折計(糖度計・濃度計)」を使用するのが一般的です。

プリズム面に切削油を数滴垂らし、境界線の目盛りを読み取ることで現在の濃度が判明します。

このとき、測定エラーを防ぐためには、測定前にデジタル式ならゼロ点調整を、アナログ式なら真水で目盛りのリセットを行うようにしましょう。

一方、pHの測定には「pH試験紙」や「ポータブルpHメーター」を使用します。

試験紙を使う場合は、液に浸したあとの色の変化を標準色と見比べるだけで、おおよその数値が判断可能です。

より精密な数値が必要な現場では、ガラス電極を用いたメーターが利用されますが、こちらは定期的な校正液でのメンテナンスが必要となります。

測定頻度と記録管理の目安

希釈濃度とpHは、一度測定して終わりではありません。

切削油の使用量や補給水の追加量、季節による蒸発量の違いなどによって数値は日々変化するため、一定の頻度で測定を継続することが求められます。

測定頻度は設備の稼働状況やタンク容量によって異なりますが、「毎日、作業開始前」に実施するのが理想的とされています。

なぜなら、前日の作業による液の減少や夜間の温度変化によって、稼働前であっても数値が変動しているケースがあるためです。

最低でも週に1回は定期測定の日を設けることで、急激な劣化を見落とすリスクを減らせます。

また、測定結果を記録として残しておくことで数値の変動傾向を把握しやすくなるうえに、異常値が発生した際にも過去データとの比較ができるため、原因調査や対応判断に役立ちます。

希釈・pH管理でよくある現場の問題

希釈濃度とpHの管理は、手順自体は複雑ではありません。

しかし、実際の現場では作業方法環境条件によって数値が変動し、管理負担が大きくなることがあります。

ここでは、希釈作業や日常管理で発生しやすい代表的な課題について確認しましょう。

手作業による希釈ムラと濃度変動

バケツや簡易的な容器を使って手作業で切削油を調合している場合、希釈ムラによる濃度変動が起きやすくなります。

作業者によって目盛りの読み方や混ぜ方にわずかな差が出るため、同じ倍率を狙って作っても、毎回同じ濃度の液が出来上がるとは限りません。

この希釈ムラが原因で濃度が薄い液がタンクに補給されてしまうと液全体のアルカリ度が下がり、pHの低下微生物の増殖(腐敗)を招きます。

さらに、手作業による測定や記録は属人化しやすいという点も問題です。

「忙しいから後で記録しよう」と後回しにされたり、測定結果のニュアンスが作業者の主観で判断されたりすることで、正しいデータが残らないケースが少なくありません。

結果的に液が腐敗する手前のサインを見落とし、気づいたときには手遅れになってしまうのです。

季節や水質による管理負担の増加

切削油の管理は、工場の室温が変化する季節や使用する水の性質によっても難易度が大きく変動します。

特に夏場は、工場の室温上昇に伴ってタンク内の水分だけが勢いよく蒸発するため、何もしなくても切削油の濃度が急激に高くなります。

逆に冬場は、寒さによって原液の粘度が上がり、水に溶けにくくなることから、思わぬ希釈ムラが発生しやすくなります。

このように、季節に応じたきめ細かい濃度調整を毎日の手作業で行うことは、現場にとって大きな労力です。

また、希釈に使用する地域の「水質(硬度)」も管理に影響を与えます。

硬度が高い水を使用すると、切削油の成分と水中のミネラル分が反応して分離しやすくなり、pHの安定性が損なわれる場合があるためです。

年間を通して一発で適正値を維持することは困難であり、環境の変化に合わせた絶え間ない微調整が求められる点が、現場の大きな負担となっています。

濃度とpHを安定させるための自動希釈装置

手作業による希釈のばらつきや管理負担を解決する手段として、自動希釈装置の導入が進んでいます。

人の手で行っていた調合を機械による制御に置き換えることで、環境や作業者に左右されない、一定の品質の切削油を安定して供給できるようになるためです。

ここでは、装置が正確に混ざり合う仕組みや、導入によって現場の運用がどのように変化するのか、具体的なメリットを交えて解説します。

設定値どおりに混合する自動希釈装置の仕組み

真岐興業の自動希釈装置は、あらかじめ設定した倍率に合わせて、原液と水を正確な比率で自動的に混合・補給するシステムです。

水流の圧力や精密な定量ポンプを用いることで、原液の流入量を緻密にコントロールしています。

これにより、手作業では難しかった「±1〜3%」という極めて高い精度での希釈を実現しており、安定した濃度管理を行いやすい点も特徴です。

この高い希釈精度によって、常に適正濃度の液がタンクへ補給されるため、濃度不足によるpHの急激な低下を未然に防止が可能です。

水の中に原液を理想的なスピードで分散させながら混合できることで調合時の分離リスクも最小限に抑えられ、水溶性切削油が持つ本来の防錆力や抗菌性を引き出すベースが整います。

人の作業に依存しない運用を行いやすい点は、自動化の大きなメリットといえるでしょう。

自動希釈装置の具体的な選び方や特徴については、「自動希釈装置の失敗しない選び方〜3つのポイントでコストを削減」で詳しく解説しています。

測定・記録の負担を軽減する運用面のメリット

自動希釈装置を運用に組み込む大きなメリットは、毎日の調合にかかっていた時間と、記録管理に伴う心理的な負担を大幅に削減できる点です。

自動で正確な希釈液が作られるため、作業者がバケツで計量したり、かき混ぜたりする手作業そのものがなくなります。

これにより、調合ミスの不安から解放されるだけでなく、誰が作業しても同じ結果が得られるようになることで、業務の標準化が一気に進むようになるでしょう。

ただし、注意しておきたいのは「装置を導入すれば、日々の測定や記録が一切不要になるわけではない」という点です。

自動希釈装置はあくまで「正確な濃度の液を新しく補給する」ためのものであり、すでに加工機の中にある液は、稼働中の蒸発や異物の混入によって日々変化していきます。

そのため、毎日の濃度計やpH試験紙による定期チェックは引き続き必要ですが、補給液側のブレがゼロになることで、異常があった際の原因特定やデータ管理の負担は格段に軽くなります。

切削油の希釈管理を見直すために

水溶性切削油の性能を長持ちさせ、製品の加工品質を安定させるためには、日々の希釈濃度とpHの管理が極めて重要な意味を持ちます。

手作業によるばらつきや季節ごとの環境変化といった現場の課題は、自動希釈装置を導入することでその多くをクリアできます。

しかし、工場の規模や使用している加工機、設置スペースの状況は現場ごとに全く異なるため、既製品の装置をそのまま置くだけでは解決しないケースも少なくありません。

真岐興業では、それぞれの工場の環境に合わせた最適な運用を実現するため、仕様の変更に柔軟に対応できる自動希釈装置を提案しています。

配管のレイアウトやタンクの容量に合わせ、1社ごとに合わせたワンオフ(特注品)のような柔軟さで対応できる点が強みです。

管理体制を根本から見直し、現場の負担を軽減したいとお考えの方は、まずは自社の環境に合わせた最適なシステムについて、弊社までお気軽にご相談ください。

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